メルカトルかく語りきを読んだ。
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[不思議なミステリーだった]
名探偵が難事件を解決する短編集ということでシャーロックホームズ的な小説を予想して読み始めました。キャラクターはシャーロックホームズとワトソンのような2人が出てくるのですがまったく雰囲気の異なる作品でした。
まず事件が起きて名探偵がでてくるのですが最後まで犯人を明らかにしません。最初の短編を読んだときは「なんじゃこりゃー」と思わず心の中で叫んでしまいました。これはハズレ本をつかんでしまったなとこの本を買ったことを後悔してしまいました。
しかし短編を読み続けるとだんだん名探偵と助手の会話の面白さに犯人など大した問題ではないような気がしてきました。ミステリーの王道である犯人が誰であるかということを放棄した不思議なミステリーでしたが小説としては成功しているように思えました。
[主役の探偵に正義感がかけらもないのが気持ちいい]
主人公の名探偵に良心も倫理観も正義感もないのが徹底して面白かったです。普通は主人公は被害者を出さないように全力を尽くすものです。しかしこの物語の主人公は被害が出るのをまったく恐れないのです。明日誰か犠牲者が出れば犯人がわかるだろうという考え方なのです。
主人公はワトソン役の人間でも平気で裏切りかねないような人間なのです。まるでジョジョにでてくるDIOのような悪のエリートという感じで読んでいて気持ちが良かったです。さすがにDIOほどひどいことをするわけではないですが徹底している人間を見る面白さがあります。
[話の面白さがリアリティのなさを上回る]
探偵小説はだいたいリアリティに欠けるものが多い印象です。警察をさしおいて個人が活躍する時点でリアリティを保つのは難しいのでしょう。とりわけこのメルカトル探偵はリアリティが皆無と言っていいくらいです。
密室事件が起こったり事件現場にたどり着いて数十秒で事件を解決したり警察署長に頼られたりします。何より主人公の性格が滅茶苦茶でタキシード姿でシルクハットをかぶっていたりします。ある意味小説としての深みを放棄しています。
しかしそういったリアリティのなさを上回る面白さがこの小説にはあります。次にメルカトル探偵がどういう行動をとるのか、何を言うのかが気になってページをどんどんめくっていきます。
[まとめ]
推理小説で殺人が起こったりするのに読んでいると明るい気持ちになる不思議な小説です。本格ミステリーを求めている人にはお勧めできませんが面白い小説を読みたいという人はぜひよんでほしいと思います。
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